ミステリーシネマ神戸・はてな支店

永遠のセルマとミステリーシネマ神戸の抜粋です。

競輪上人行状記 1963 日活

直木賞作家・キックボクシング評論家で浄土宗僧侶でもあるマルチ文化人の祖・寺内大吉の小説を映画化したもの。

日活はこの時期、アクション一辺倒からあたらしい路線を模索し、このような佳作をよく作っていた。

寺の次男坊で教師をやっている春堂は、兄の急逝で呼び戻される。

しかし犬寺と笑われても本堂の再建を急ぐ父や義姉の姿が浅ましく思われて、集金したお布施を競輪に突っ込んでしまう。

やがて父は死に、義姉は息子が父の子だと告白する。

春堂はますます競輪にのめり込み、寺の権利を呑み屋に巻き上げられてしまう。

彼は起死回生を賭けて最後の大勝負に出る。

ラストで春堂は競輪の予想家に転身するが、その横で予想を一枚ずつ売っているのが、春堂と一緒になる娘で、デビュー間無しの伊藤アイコが演じている。

ぼーっとした少し弱い子で義父に性的虐待を受けて春堂に保護される役だが、本人は当時14歳、弘田三枝子や田代ミドリと同じミルクティーン世代のロカビリー歌手である。

その外見とは違い、パンチのある豪快な歌声を聞かせていた。

ヤマハポプコンで優勝したり、のちにペギー・マーチと競作になる「忘れないわ」をヒットさせたが、布施明が「シクラメンのかほり」をヒットさせて、世の中がニューミュージック時代に移行してからは、ヒットになかなか恵まれず、五木ひろし八代亜紀を輩出した全日本歌謡選手権を難なく10週勝ち抜いたにも関わらず、いまだ地味な仕事を重ねている。

監督 西村昭五郎

脚色 大西信行 今村昌平

原作 寺内大吉

撮影 永塚一栄

音楽 黛敏郎

出演

小沢昭一

加藤嘉

南田洋子

高橋昌也

高原駿雄

初井言栄

伊藤アイ子

加藤武

「忘れないわ」